
国民生活センターや各地の消費生活センターが相次いで注意を呼びかけている事例があります。
その名も『ロマンス投資詐欺』。
 しかし、どんな詐欺なのかイメージできない方もいるでしょう。この犯罪はどんなもので、引っかからない為にどんな点に注意した方が良いのか詳しく解説していきます。
そもそも『ロマンス投資詐欺』ってなんですか?
「ロマンス投資詐欺」とは、SNSやマッチングアプリ、果ては出会い系サイト等において知り合った相手に架空の投資話を持ちかけて騙す詐欺です。
 この詐欺の特徴は、「ロマンス詐欺」といわれる、いわゆる恋愛・結婚詐欺の様に親密な関係性を作り上げて金銭を巻き上げる手口と、昔から良くある「投資詐欺(古典的なのは株式・債券・先物・為替ですが、最近ではFXや仮想通貨(暗号資産)のケースが増えています)」によって金銭をだまし取る手口が複合している事です。
 「ロマンス詐欺」という大枠のなかに「ロマンス投資詐欺」が含まれます。
 そして、最近は国内ではなく国際的なロマンス詐欺が増えてきているのです。
 その名も「国際ロマンス投資詐欺」といいます。
 しかし実際には報道や警察の注意喚起などにおいて、「ロマンス投資詐欺」を「ロマンス詐欺」として、「国際ロマンス投資詐欺」を「国際ロマンス詐欺」として表記しているケースも多いようです。
どの程度の被害規模なんですか?
被害金額は様々ですが、数十万で済めば傷も浅いですが、百万円単位から場合によっては1千万円を超えてしまうケースもよく耳にします。
 そんなロマンス投資詐欺ですが、国民生活センター越境消費者センター(CCJ)に寄せられた相談件数ベースで見ると、出会い系やマッチングアプリによる被害相談は年を追うごとに増加し、そのうちの投資等のトラブル相談比率がエライ事になっています!
| 会い系サイトやマッチングアプリ等に関する 年度別相談件数 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 
|---|---|---|---|---|
| 出会い系やマッチングアプリに関する相談件数 | 12件 | 25件 | 109件 | 187件 | 
| うち、投資等の相談件数 | 2件 | 5件 | 84件 | 170件 | 
| 投資トラブル比率 | 16.6% | 20.0% | 77.0% | 90.9% | 
相談件数が年を追うごとに増加しているのがわかります。 その中でも投資関連トラブルの占める比率がとんでもなく高まっているのが目に見えてわかります。
 
 相談件数を男女比でみると、2020年度は男:女は「7:3」でしたが2021年度は「6:4」へと、女性の被害がじわじわ拡大してきています。
 
 従来は投資詐欺といえば男性が引っかかるケースが多かったわけですが、このロマンス投資詐欺は女性の方もかなり被害にあわれていますので注意してください。
 また、投資トラブルにまつわる具体的な決済手段についても2021年度相談分で分析されていて、最近は暗号資産(ビットコインをはじめとする仮想通貨等)が54%と過半を占めました。
 次に銀行振込で38%となり、その他は8%とごく少数です。
 
 まず気を付けるべきは「仮想通貨で送金という話にご注意を!」といった所でしょう。
例えばどういう風にだまされるの?

国民生活センターに寄せられた代表的な事例を見てみましょう。
ある女性はマッチングアプリで出会いの相手を探していました。 マッチング相手は海外の外国人も含めて捜したところ、とある国の外国人経営者とマッチングしました。メッセージのやり取りを繰り返すうち、徐々に打ち解けていく二人。 ほどなくしてマッチングアプリから男性が退会すると無料通話アプリでのメッセージのやり取りへと移行しました。
二人の会話はアプリ内で行われていて、「妻」とか「ベイビー」などと呼びかけられすっかり信用してしまいます。 そんなある日、彼から「ふたりの将来に向けて投資しないか」と提案されました。 女性は何度も断ります。しかし何度も説得を受けるうち、あまりの熱心さに少額ならと思って紹介された投資サイトに入金して投資したところ、利益がでたのです。 その投資サイトから利益を含めて出金する事も出来ました。 そこで彼からもっと元金を増やせばそれだけ大きく儲けられると説得されて、500万円ほどを投資サイトに入金してしまいます。 彼女は資産に余裕があったわけではなく銀行や金融からの借金で用意されたお金でした。 サイト上では儲けが出ており、出金しようと手続きをしたところ、利益を含めた総資産の15%を保証金として支払う必要があると投資サイトから請求を受けます。 しかし、彼女にそんな金額を用意できる余裕はありません。 支払について彼に相談をしていたある日、突然連絡が取れなくなり音信不通となってしまいました。
こんな話が出始めたら冷静に
実際に会ったりビデオ通話をしたりといったリアル体験がないにもかかわらず、結婚を前提にした生臭い話(お金のこと)は、通常の感覚ではおかしいと気づくはずです。
 リアルでのお付き合いを重ねていても、そういった話は具体的にお互いの家族への紹介があったりして、状況が固まってからの話ですよね?
 そんな段取りをすっ飛ばして結婚するための資金援助や投資話が出始めたら要注意です。
 その話を聞いたら、あなたはきっと頭の隅で「順番としておかしくない?」と疑問がわいているはずです。
 その最初に来るインスピレーションを大切にしてください。
 それが出来れば大丈夫!すぐに毅然とお断りしましょう。
だまされる過程の考察
ここのように文章として冷静に読み進めていれば、「自分はひっかかる訳ない!」と思うものです。
しかし被害者は日々増加しているというのが厳然たる事実です。
 ではどうして女性の被害者が増え続けているのか?
 
 信じてしまう一番の理由は、信頼性が醸成されているからです。恋愛詐欺・結婚詐欺などにも共通する方程式です。
 具体的にはマッチングアプリや無料通話アプリやメッセージアプリで、プライベートなやり取りを何度も行ううちに、相手を実際に顔を合わせた事がある友人以上に信頼しきってしまうのです。
 日本人では照れてしまい、なかなか使わない「ワイフ」や「ハニー」「ベイブ」など、外国人特有の甘い呼び方であなたを上機嫌にさせていきます。
 愛情表現だって大げさすぎるくらい。
 気の利いた話も上手で、何よりお金持ちだったりお堅い勤め人だったりといった、詐称された経歴もあなたを安心させる材料となります。
 そのためならパスポートや免許証だって偽造して見せるでしょう。
 最初は何も生臭い話なんかしません。この詐欺にとって信頼を得る事が最も重要だからです。
 そうして数カ月、半年、1年の後に、「この人なら大丈夫」と思わせていくのです。
 もちろん、お金を引き出すまではマメに何度も連絡してくれるので、「気遣いができる異性」と勘違いしてしまいます。
 ここまでくれば、恋愛・結婚といった方向にボルテージを上げていきます。
 普段異性から恋愛アピールを受けない方は特にこの時点でもうメロメロ状態になっているでしょう。
ここでようやく仕上げに入ってきます。そう生臭いお話の登場です。
 投資でも借金返済でも商売を始めるでも理由は相手が納得しそうなものなら何でもOKですが、ロマンス投資詐欺の場合はその名の通り投資名目であなたを唆します。
 投資なので将来に向けた資産形成の一環というのが無理のない誘い文句です。
 それまでと同じに、情熱的に理知的にあなたにアプローチをかけていきます。
 強引に押し続けたりはしませんよ?そんな熱が冷める手口なら大して被害拡大しません。
 何度断っても、繰り返しあなたの疑問を抱くための思考の幅を削り、投資してみようかと思い込まされます。
 そして仕上げが投資サイトでの成功体験です。
 最初は少額で試させます。そして実際に利益を得られ、その利益ごと手元にお金が増えて戻ってくるのです!
 信頼できる彼が勧める本当に儲けが出て手元に帰ってくるという圧倒的な正のフィードバックが強くあなたに宿ったところで、最後の一仕事、高額投資のお誘いとなるわけです。
アプリやサイト側で対策できないの?

出会い系のシステムやマッチングアプリ側で対策できないのかというのは当然持つ疑問だと思います。
 実際のところ、そういった対策を行うかどうかについては業者任せであり、各アプリやサービスによって対応は異なります。
 実際にAIによって悪質スコアを算出し、被害者が発生する前に早期検知するシステムを導入しているアプリ業者もあります。
 しかしあくまで機械的な判定であり、全ての怪しい人物を排除できるわけではありません。
 そもそもそんなあからさまな怪しい人物を装う詐欺師はいません。
 世の中で好ましいと思われる人物像こそ詐欺師が作り出す架空の人物なのです。
 出会い系サイトやマッチングアプリはあくまで出会いの場を提供するシステムであり、利用者の人物照会を行っているわけではない事に留意しましょう。
 それでも、業者による対策はあるに越したことは無く、そうした機能をチェックした上で利用するアプリを検討すれば、被害にあう可能性は低くなります。
 カジュアルな出会いのシステムであるほど、利便性に優れ使いやすく人気になるのですが、同時に詐欺犯が紛れ込むのに好都合であることも理解しておきましょう。
 
 あなたはマッチングアプリに登録するときに、マイナンバーカードや免許証と同時に年収証明とかの提出を求められたら、それでも登録しますか?
ロマンス投資詐欺にあわないためにできる事は?
出会い系サイトやマッチングアプリを利用し、ロマンス投資詐欺を事前に避けるためには特徴を知っておくことが大切です。
 主な特徴としてインターネットで拾った写真を使っているケースが多いです。
 自撮り写真として送信してくる回数は多いけど、実際に会ったりビデオ通話したりはしてくれません。
 また、送られてきた写真はインターネットで画像検索してみるのも嘘を見抜く方法のひとつです。
 さらに複数アカウントを使って同時進行している事が多いためLINE等では無料スタンプかほんの少しの有料スタンプしか使わないのも特徴的です。
 これらの特徴が顕著な場合は注意してください。
 特にサービスやアプリからLINEなどの別チャットツールに移りたがっているのに、実際のビデオ通話はしないというのはとても怪しい状況です。
 また金額の大小にかかわらず投資の話がでてきたら絶対に乗らないようにしましょう。
詐欺かな?と少しでも感じたら
やり取りしている相手がロマンス投資詐欺かもと不審に思った場合、多額のお金を投資していたらまず消費生活センターや警察のサイバー犯罪相談窓口に連絡しましょう。
 被害にあったお金を全て取り戻すのは非常に難しいかもしれませんが、弁護士へ相談したことで一部でも取り戻せたケースもあります。
 まだ支払っていない状況なら、相手をブロックするなどして連絡を取らないようにしましょう。
 想いを寄せていると離れるのは辛いかもしれませんが、嘘をつかれていたと考えてきちんと距離をおいて、冷静な自分を取り戻しましょう。
記者:あさせー/編集:Akihisa.Y
出典:国民生活センター/発表情報2022年3月


